【マンデリンコーヒーとは】特徴やインドネシアの産地を紹介

はじめに

日本でも広く親しまれているマンデリンコーヒー。 インドネシアのコーヒーと言えば、マンデリンコーヒーを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? その深いコクと独特な風味は、多くのコーヒー愛好者に支持されています。 でもなぜこんなに人気があるのでしょうか? そして、どのようにしてこの特別な味わいが生まれるのでしょうか?

この記事では、マンデリンコーヒーがどのようにして生まれ、どんな特徴を持っているのかを詳しく解説します。

私はインドネシアに暮らし始めてからコーヒーにはまり、様々な産地のコーヒー豆を試してきました。 もちろん、スマトラ島のいろいろな産地の豆も飲んだことがあります。 ただ、インドネシアで売られているコーヒー豆は、基本的に産地の名前で売られています。 マンデリンコーヒーはスマトラ島の特定の地域で採れる、コーヒー豆の総称です。 これまで、私は同じスマトラ島でもどの地域で採れたコーヒー豆がマンデリンコーヒーにあたるのか、認識が曖昧でした。 今回のマンデリンコーヒーについての記事は、そんな私自身の調査も兼ねたものになります。 私と同じくマンデリンコーヒーに興味を持った人の参考にも慣れば幸いです。

マンデリンコーヒーとは?

インドネシアのマンデリンコーヒーはスマトラ島の特定の地域で栽培され、日本でもファンが多いコーヒーの一つです。

マンデリンコーヒーは、インドネシアスマトラ島で栽培される特定の地域のコーヒー豆の総称です。 特に濃厚で深い味わいが特徴で、日本を含め世界中で人気があります。

マンデリンコーヒーの産地がありスマトラ島について

そもそも、インドネシアについてどれだけご存知でしょうか?
インドネシアは大きく分けて、スマトラ、ジャワ、カリマンタン、スラウェシ、ニューギニアの5つの大きな島と、バリ島からティモール島に至る小スンダ列島、マルクの両諸島から構成されます。

マンデリンコーヒーは、そんなインドネシアスマトラ島で栽培されています。
それでは、スマトラ島の特徴を簡単に知っておきましょう。

スマトラ島の位置と規模
スマトラ島インドネシアの西部に位置し、インド洋とマラッカ海峡に囲まれています。面積は約473,000平方キロメートルで、インドネシアで2番目に大きな島です。

スマトラ島の地理と気候
スマトラ島は赤道直下にあり、熱帯気候が特徴です。高温多湿で、年間を通じて降雨量が多い地域もあります。これにより、豊かな植生と肥沃な土壌が育まれています。

スマトラ島の自然環境
スマトラ島は多くの火山が連なる火山帯に位置し、これがコーヒー栽培に理想的な火山性土壌を提供しています。また、広大な熱帯雨林が広がり、多様な動植物が生息しています。

マンデリンコーヒーの産地

前述の通り、スマトラ島で収穫された全てのコーヒー豆が、マンデリンコーヒーと呼ばれるわけではありません。それでは、どの地域で収穫されたコーヒー豆が、マンデリンコーヒーと呼ばれるのでしょうか?

早速、マンデリンコーヒーの主な生産地を見ていきましょう。

リントン(Lintong)
北スマトラ州のトバ湖の南西に位置し、標高約1,200メートルから1,600メートルの肥沃な火山性土壌で栽培されます。

ドロック・サングル(Dolok Sanggul)
リントン地区に隣接し、高品質なコーヒー豆を生産します。

パルンギャン(Parlilitan)
トバ湖周辺の高地に位置し、豊かな風味と深いコクを持つコーヒーを栽培しています。

シダマニ(Sidamanik)
標高1,000メートルから1,400メートルで、滑らかな口当たりと独特の香りが特徴です。

タケンゴン(Takengon)
アチェ州ガヨ高地に位置し、ガヨ・マンデリンと呼ばれる高品質なコーヒーを生産しています。

スマトラ島のマンデリンコーヒーの産地の一覧になります。

トバ湖周辺にマンデリンコーヒーの主な産地が集中していることが分かります。 ではそれはなぜでしょうか?いくつか理由があるようです。

トバ湖周辺がマンデリンコーヒーの産地として適している理由

火山性土壌
トバ湖は世界最大のカルデラ湖で、約7万4千年前に発生したトバ火山の大噴火によって形成されました。この噴火により、周辺地域には非常に肥沃な火山性土壌が広がっています。この火山性土壌は、ミネラルが豊富で排水性が良く、コーヒーの木が健全に育つための理想的な環境を提供しているのです。

高地
トバ湖周辺は標高1,000メートルから1,600メートルの高地に位置しています。高地の気候は涼しく、昼夜の温度差が大きいため、コーヒーの実がゆっくりと成熟し、風味豊かな豆が育ちます。このゆっくりとした成熟過程が、マンデリンコーヒーの深いコクと複雑な風味を生み出す一因となっています。

適度な降雨量
トバ湖周辺地域は年間を通じて適度な降雨量があり、コーヒーの木に必要な水分を十分に供給しています。一定の降雨量があることは、コーヒーの木が健康に育ち、安定した収穫量を確保するために重要です。

林保
トバ湖周辺には広大な森林が広がっており、自然環境が良好に保たれています。森林は水源の保護や気候の安定に寄与し、コーヒー農地の環境維持にも役立っています。また、森林の存在は生物多様性を高め、コーヒー栽培における自然の害虫防除にも役立っています。

伝統的な農法
トバ湖周辺のコーヒー農家は、長い歴史と伝統に基づく農法を継承しています。多くの農家は、化学肥料や農薬を使用せず、オーガニックな方法でコーヒーを栽培しています。この伝統的な農法は、コーヒーの品質を高めるとともに、環境にも優しい方法です。

経済的な依存
この地域の経済はコーヒー栽培に大きく依存しており、多くの農家がコーヒー生産に従事しています。コーヒー栽培は地域の主要な収入源であり、そのため、地元のコミュニティは高品質なコーヒーを生産するために一生懸命取り組んでいます。

このような、火山性土壌、高地の気候、適度な降雨量、良好な自然環境、伝統的な農法、および地域経済の依存といった複数の要因が組み合わさった結果、トバ湖周辺がマンデリンコーヒーの最適な栽培の環境となっているのです。

マンデリンコーヒーの特徴

マンデリンコーヒーの特徴は、数あるコーヒーの中でも際立つ個性を持ったコーヒーです。大きく以下のような特徴があります。

  • 深いコク: 濃厚でリッチなコクがあります。
  • ほのかな苦味: バランスの取れた苦味が特徴です。
  • スパイシーな香り: 独特のスパイシーな香りが楽しめます。
  • 低い酸味: 酸味は控えめで、飲みやすいです。

マンデリンコーヒーの精製方法

マンデリンコーヒーの特別な風味は、その精製方法にも関係しています。スマトラ式と呼ばれる「ウェットハル法」を採用しており、以下の手順で行われます。

  1. 収穫: 完熟したコーヒーチェリーを手摘みします。
  2. パルピング: チェリーの外皮を取り除きます。
  3. 発酵: 水に浸けて発酵させ、果肉を取り除きます。
  4. 乾燥: 果肉が取り除かれた豆を部分的に乾燥させます。
  5. ハルリング: 乾燥した豆を取り出し、皮を剥がします。
  6. 再乾燥: 最終的に完全に乾燥させます。

マンデリンコーヒーの歴史

マンデリンコーヒーの歴史は、インドネシアでのアラビカ種コーヒー栽培の始まりに遡ります。

インドネシアにおけるコーヒー栽培の始まり

インドネシアでのコーヒー栽培は、17世紀末から18世紀初頭にかけて、オランダ東インド会社(VOC)がアラビカ種のコーヒーを持ち込んだことに始まります。オランダは当時、インドネシアを植民地支配しており、気候がコーヒー栽培に適していると判断したため、ジャワ島でコーヒー栽培を開始しました。

スマトラ島へのコーヒー伝播

ジャワ島での成功を受けて、コーヒー栽培はスマトラ島を含む他のインドネシアの島々へと広がりました。スマトラ島は特に、その肥沃な火山性土壌と高地の気候がコーヒー栽培に適しており、栽培面積が急速に拡大しました。スマトラ島のトバ湖周辺は、その優れた地理的条件から特に注目されるようになりました。

マンデリンコーヒーの誕生

マンデリンコーヒーの名前は、スマトラ島のバタック族の一派であるマンデリン族(Mandheling)に由来しています。マンデリン族がコーヒー栽培に従事し、特有の栽培・加工方法を発展させたことから、この地域のコーヒーは「マンデリンコーヒー」として知られるようになりました。

マンデリンコーヒーの発展と特徴

マンデリンコーヒーは、その独特な風味と深いコクで世界中のコーヒー愛好者に広く知られるようになりました。特に、ウェットハルと呼ばれるスマトラ独自の加工方法により、独自の風味が引き出されます。この方法は、コーヒーチェリーを湿った状態で脱穀し、乾燥させる過程を経るもので、特有の滑らかさと重厚なボディをもたらします。

現代のマンデリンコーヒー

現在、マンデリンコーヒーはスマトラ島のさまざまな地域で栽培されています。前述のリントン、ドロック・サングル、パルンギャン、タケンゴンなどの地域が主要な産地として知られています。これらの地域では、伝統的な農法を守りつつ、環境に配慮した持続可能な農業が実践されています。

マンデリンコーヒーの楽しみ方

マンデリンコーヒーは、その豊かな風味を楽しむために様々な方法で飲むことができます。以下はその一例です。

ブラックコーヒー
豆本来の豊かな風味やコクを存分に楽しむことができます。

カフェオレ
マンデリンコーヒーはミルクとの相性も抜群です。ミルクと合わせることで、まろやかさと豊かな風味を楽しめます。

甘いスイーツと一緒に しっかりとしたコクと苦みのあるマンデリンコーヒーと甘いスイーツがピッタリ。至福のコーヒータイムになること間違いなしです。

マンデリンコーヒーについてのまとめ

マンデリンコーヒーは、スマトラ島の特定の地域で育てられ、独特の精製方法で処理されることで、その豊かな風味が生まれます。深いコクとバランスの取れた苦味、スパイシーな香りが特徴で、世界中で愛されているコーヒーです。スマトラ島の多様なコーヒー文化は調べていても面白かったです。みなさんもマンデリンコーヒーの魅力を存分に味わってみてください!